ヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計のオーバーホール・修理方法を解説

技術力の高さと芸術的な仕上げから「超薄型ムーブメントの先駆者」としても知られるヴァシュロン・コンスタンタンのムーブメント。
ヴァシュロン・コンスタンタンのような複雑機構を搭載している時計は、定期的なメンテナンスを怠ったまま使用していると、精度に狂いが生じたり動作に異常をきたしたりする場合があり、最悪のケースでは故障してしまう可能性もあります。
本記事では、腕時計のオーバーホールの概要や重要性をはじめ、ヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーホールサービスについて解説します。
また、オーバーホールを正規店以外に依頼するメリットやデメリットについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
腕時計のオーバーホールとは

腕時計の「オーバーホール」とは、時計内部の機械(ムーブメント)を分解して内部の洗浄や注油をしたり、調整を行ったりする総合的なメンテナンスのことです。
オーバーホールの工程として、まずはムーブメントを完全に分解して部品ごとに超音波洗浄機などで古い油や汚れを除去します。この際に部品の摩耗や劣化状況をチェックし、必要に応じて古い部品を新品に交換します。次に適切な箇所に専用オイルを注油した後、精度の確認やパワーリザーブを調整しながら再組み立てを行い、最後に防水性や外観などを総合的に検査して作業完了です。
オーバーホールは一般的に数年に一度の頻度で行うことが推奨されていますが、メーカーや専門店によっては推奨時期が若干異なります。
腕時計のオーバーホールの重要性
腕時計のオーバーホールは、精度の回復と寿命を延ばすための「再生の儀式」とも言えるほど重要です。ムーブメント内部には摩擦を抑えるために数種類の潤滑油が使われていますが、これらは時間の経過とともに酸化や乾燥がすすみ、やがて潤滑性を失ってしまいます。その結果、部品同士が直接擦れ合い、摩耗や破損を引き起こすリスクが高まります。
さらに、ムーブメント内では歯車や軸が高速で動くため、金属粉や汚れが内部に蓄積することがあります。これが精度低下や故障を引き起こす要因となることから、オーバーホールによる内部洗浄も重要な作業です。
ヴァシュロン・コンスタンタンのような高級腕時計ブランドの腕時計は、完全に故障してしまうと修理費用が高額になってしまうケースも少なくありません。
そのため、オーバーホールは、壊れてから行うものではなく、壊さないために行う言わば「予防整備」の考え方のもと、定期的に行うことが望ましいと言えるでしょう。
ヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計のオーバーホールサービスとは

ヴァシュロン・コンスタンタンでは、「コンプリートサービス」と呼ばれるフルオーバーホールサービスを提供しています。ここでは、コンプリートサービスの概要と詳細な作業内容について解説します。
コンプリートサービスの概要
ヴァシュロン・コンスタンタンの「コンプリートサービス」は、単なるメンテナンスではなく、時計の性能や美観、信頼性を取り戻すための包括的な再生プロセスです。
コンプリートサービスでは一般的なオーバーホール作業のほか、軽い表面ポリッシュ仕上げによる艶出し作業も行います。
コンプリートサービスは、全国の正規ブティックや正規販売店で受付を行っており、正規サービスセンターであるリシュモンジャパンカスタマーサービスがコンプリートサービス作業を担当します。
リシュモンジャパンカスタマーサービスは、ヴァシュロン・コンスタンタンをはじめとするリシュモングループ傘下の高級時計ブランドのアフターサービスを一手に担う専門の部門であり、最高レベルのサービスが受けられるため安心です。
なお、モダン・ウォッチのコンプリートサービスが完了するまでは、見積もり承諾後4~6週間ほどかかります。
コンプリートサービスの詳しい作業内容
ヴァシュロン・コンスタンタンのコンプリートサービスの工程ごとの作業内容は下記の通りです。
| 工程 | 作業内容 |
| 診断・検査 | 防水性、磁気帯び、精度、外装の状態などを総合的にチェックします。 異常があれば、後続の作業で対応するための準備を行います。 |
| 分解 | ケースを開けてムーブメントを取り出して、すべての部品を分解します。 摩耗・破損・劣化のある部品を特定して、必要に応じて部品を交換します。 |
| 洗浄 | ムーブメントのすべての部品を専用の洗浄タンクにて超音波洗浄を行います。 細かいゴミや金属粉、古くなった潤滑油を除去します。 |
| 組み立て | 各部品に適切な潤滑油を施しながら、ムーブメントを再度組み立てます。 パワーリザーブや精度の調整を行い、最適な状態に仕上げます。 |
| 艶出し | ケースやブレスレットの軽研磨(ポリッシュ)を実施します。 |
| 最終検査 | 熟練職人が外観と仕上げを厳密にチェックします。 |
ヴァシュロン・コンスタンタンの修理サービスは、利用後に2年間の動作保証が付与されます。
ヴァシュロン・コンスタンタンのヴィンテージ・ウォッチの修復サービスとは
ヴァシュロン・コンスタンタンの「ヴィンテージ・ウォッチの修復サービス」とは、ヴィンテージ・ウォッチ専用のメンテナンスサービスのことです。
ヴィンテージ・ウォッチには独特の構造やクセがあり、特殊な装飾技法を施したコレクションもあります。そのため、技術レベルの低い時計技師では対応できないケースがあることから、ジュネーブ本社のヘリテージ部門に所属する熟練の時計師たちが担当します。
なお、要望に応じて「機能のみ」と「プレミアム」の2種類のサービスから選択できるほか、修復に要する期間は作業条件や内容によって幅があり、完了するまでに3~6カ月ほどの期間を要します。
「機能のみ」と「プレミアム」のサービス内容の違い
ヴァシュロン・コンスタンタンのヴィンテージ・ウォッチ修復サービスは、先にも紹介したように「機能のみ」と「プレミアム」の2種類があります。
まず「機能のみ」とは、時計が正常に動作するように必要最低限の修理を行う修復サービスです。
素材が経年変化によって帯びる独特の風合いや色合い(パティーナ)を尊重したまま、時計の外観には手を加えずにムーブメントの機能回復に特化した修復を行います。
一方、「プレミアム」は時計の状態や年代、構造に応じて修復内容を一から設計して可能な限りオリジナルに近づける完全パーソナライズ型の修復です。
ムーブメントや文字盤だけでなく、ケースや針、装飾まで幅広く対応しています。
時計の機能回復はもちろんのこと、外装の傷や変色を素材に合わせて丁寧に修復するため、美観の回復と機能回復を両立した修復プログラムです。
ヴァシュロン・コンスタンタン正規店のオーバーホール費用の目安

ヴァシュロン・コンスタンタンでは、コンプリートサービスやヴィンテージ・ウォッチの修復サービスといった、オーバーホールに関する費用を公式に提示していません。
なぜなら、全モデルのオーバーホールは完全見積もり制としており、モデルや腕時計の状態によって費用が変わってくるからです。
ヴァシュロン・コンスタンタンが過去に製造・販売したモデルは、そのすべてにおいて永久修理の対象としているため、実物の状態を確認してからでないとオーバーホールの費用を確定できません。
ただし、正規カスタマーサービスであるリシュモンジャパンカスタマーサービスのオーバーホールの基本料金は10万円前後~となっています。そのため、この金額をおおよその目安と考えておき、詳細な費用は見積もりをとって確認しましょう。
ヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーホール依頼を非正規店にするメリットとデメリット

ヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計のオーバーホールは、正規店ではなく、一般の時計修理店などの非正規店へ依頼することもできます。
非正規店にオーバーホールを依頼することにはメリットもありますが、注意したいデメリットもあるため、事前にしっかり確認したうえで利用しましょう。
非正規店に依頼するメリット
正規店では自社モデルの販売価格を基準に修理代金を算出しており、販売価格が高いモデルほど修理代金も高くなる傾向にあります。
一方、非正規店では一般的に修理内容や修理箇所、機能の種類といった区分で料金が設定されています。依頼する店舗ごとにオーバーホール費用に若干のバラつきがありますが、正規店と比較すると低めに設定されているケースが多いです。
また、正規店は見積もり承諾後4~6週間ほどの期間がかかりますが、非正規店では一般的に正規店よりも短期間で完了するため、修理に時間をかけたくない方にはおすすめです。ただし、店舗内での対応が難しい場合は、正規店と同程度の期間を要する場合もありますので、修理にかかる期間を事前に確認しておきましょう。
非正規店に依頼するデメリット
非正規店では店舗によって技術や設備に大きな差があるため、技術力が低い店舗や設備が整っていない店舗が少なからず存在します。そういった技術力の低い非正規店にオーバーホールを依頼してしまうと、修理するどころか、精度や防水性に問題が生じる可能性があります。
そのため、非正規店を利用する場合は、一級時計修理技能士が在籍しているか、また工房の設備やヴァシュロン・コンスタンタンの修理実績が豊富かどうかなどを事前にしっかり確認することが大切です。
さらに、複雑機構を搭載したモデルの修理実績や、ヴィンテージモデルに対する修理実績の有無なども確認しておくと安心です。
なお、正規店は品質の保証が主眼となりますが、非正規店は不具合の解消が主眼であるため、どちらを優先するかで総合的に判断しましょう。
時計のメンテナンスなら「YUKIZAKI LABO(ゆきざきラボ)」にお任せください
YUKIZAKI LABO(ゆきざきラボ)は、日本最大規模を誇る専用工房と高度な技術力を有し、高級時計のメンテナンスやジュエリーの修理加工に特化したサービスを提供しています。
工房は複数の専門ルームに分かれており、それぞれの工程に特化した環境で作業を行うことが特徴です。例えば、オーバーホールや品質検査を行う「WORK SHOP」では、約10名の時計技術士たちがムーブメントの分解・洗浄・注油・調整を行っています。
遮音性のある清潔な環境で、技術士たちが自分の作業スタイルに合わせたツール配置を行うことで、精度の高い仕上がりを実現しており、お客様から高い評価を受けています。
また、自社設備によるワンストップ対応としていることから、すべての工程をラボ内で完結できるため、信頼性とスピード感が高く「待ち時間の少なさ」も大きな利点です。
ヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計のオーバーホールを依頼するなら、YUKIZAKI LABO(ゆきざきラボ)にぜひ一度ご相談ください。
YUKIZAKI LABO(ゆきざきラボ)
ヴァシュロン・コンスタンタンの修理サービスは費用が高め
ヴァシュロン・コンスタンタンでは、過去に販売したすべてのモデルにおいて永久修理の対象としており、メンテナンスには高度な専門知識と経験が求められることから、必然的にサービスの費用が高くなります。また、不具合の解消だけを目的とした修理と違い、予防保全を含めた品質の保証を目的としていることも、サービス費用が高額になりやすい理由のひとつです。
一方、費用の安さや納期の早さでは、非正規店の修理サービスに一定のメリットがありますが、確かな技術力や設備が整っていることが条件となります。
YUKIZAKI LABO(ゆきざきラボ)なら、高度な技術力と充実した設備により、精度の高い仕上がりを実現します。修理やオーバーホールを依頼するお店に迷っているなら、YUKIZAKI LABO(ゆきざきラボ)の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
YUKIZAKI LABO(ゆきざきラボ)
この記事の監修者

佐藤高雅(さとうたかまさ)
株式会社ジェムキャッスルゆきざき ECソリューション室副室長
1996年生まれ。高校在学中に煌びやかな高級腕時計やジュエリーに興味を持つ。
大学在学中に某日本メーカ時計正規店でアルバイトを経験し卒業後、店舗販売員として2019年ジェムキャッスルゆきざきに入社。
3年間販売員を経験した後、時計の知識や文章力を買われECソリューション室へ異動。
以後ゆきざきサイトの文章やブログ記事、デザイン関連を統轄しており、メディア広報室立ち上げ時にはYouTubeレギュラー出演やニュース番組、中国系SNSにも出演する。
初めて購入した腕時計は、23歳でブレゲのマリーン2。
婚約時計はペアでジャガールクルトのレベルソ。
ランゲ&ゾーネ ランゲ1を手に入れるものの、自分には早すぎたと手放す。
40歳になったら記念で購入予定(理想)
好きなブランドは、ジャガールクルト・ランゲ&ゾーネ・FPジュルヌ。時計業界歴7年。
■経歴
2019年 株式会社ジェムキャッスルゆきざき/新卒
2021年 メディア広報室/設立
2022年 ECソリューション室/副室長
■得意領域
WEBライター
高級腕時計全般
■保有資格
Google アナリティクス認定資格(GAIQ)
ジュエリーコーディネーター
