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【時計職人に聞く】Part.6 その時計・・・本物?それともニセモノ?

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その時計・・・本物?それともニセモノ 時計真贋

【時計職人に聞く】Part.6 その時計・・・本物?それともニセモノ?

今回は時計を購入したり所有するときに、
皆様がきっと気になるだろうポイントについてお話したいと思います。

ズバリ「その時計は本物?それともニセモノ?」という部分でお話しさせていただきたいな~と。

数ある高級腕時計、ロレックス、オメガ、タグホイヤー、フランクミュラー、ウブロ、シャネル、パネライ、ジャガールクルトなどなど…これら以外にも多くの有名ブランドが世界中のファンを魅了していますよね。

でも、その中にはブランドの仮面をかぶったニセモノが存在しているのもまた事実です。

そこで、
私たちの修理技術部門において、今までこんなものを見たことがある。
また、こんな話を聞いたことがある。といったお話を長年の技術経験のある職人たちに聞いてきましたので、みなさまへもお伝えしていきたいと思います。

第6回のお題目は以下の通り↓↓

 

1.昨今の時計業界とETA問題。

時計業界の真贋(本物と偽物)を判断する細かい部分をご紹介する前に、
事前に知っておいた方がいいと思う情報をひとつ!

「2020年 ETA問題。」

といってもEPAとかFTAとかに似てるし、何か新しい決まり事の略称??。。。
とかそういう事ではないですよ(笑)

時計好きの皆さまには知っていらっしゃる方も多いでしょう。
そう、ETA社が2020年にムーブメントの供給をやめるというお話です。

でも、なんでETA社と時計のニセモノ、ホンモノが??

直接的には関係ないですが、
今回のブログを下の方まで読んで頂ければ、きっと名探偵コナンのように
ピーンと最後には線が繋がって納得して頂けることでしょう。

まずは、ETA社について。
ETA社の発祥の起源は1924年まで遡ります。
最初は3社の企業連合を結成しスイス以外の国々への技術的にも経済的にも対抗力を持たせていこうという事が始まりでした。

その後、多くの企業を吸収合併しながら、前回のブログPart.5でもちらっと登場したキーワード「クォーツショック」を経て世界最大級のムーブメント供給メーカーへと成長します。

現在ではスイス時計3大グループと呼ばれる巨大な勢力図があります。
「スウォッチグループ」
「リシュモングループ」
「LVMHグループ」

ちなみに、各グループの傘下にはこんな錚々たるブランドが並びます。

「スウォッチグループ」 スウォッチ、ティソ、ハミルトン、オメガ、ブランパン、ブレゲ
「リシュモングループ」 パネライ、カルティエ、IWC、モンブラン、A.ランゲ&ゾーネ
「LVMHグループ」タグ・ホイヤー、ルイ・ヴィトン、ゼニス、ショーメ、ウブロ

その「スウォッチグループ」の傘下にいるのがETA社になります。
※(この辺りは深堀するとめちゃくちゃ長くなるので、また何かの機会にご紹介いたしますね。)

上の背景がグレーの部分大事なポイントは、
ETA社の供給しているムーブメントをパネライも、オメガも、タグ・ホイヤーもグループ間を超えて時計業界全体が使用しているという事実です。

ETA社のムーブメントは「高品質」「低価格」「安定供給」「流通量が多いので修理対応が容易」
とメリットがたくさんありました。

このムーブメントの供給を2020年にはストップしますよ~というのが、
「2020年 ETA問題。」と呼ばれるものです。

2.さまざまなニセモノたちの特徴

それでは、今度は話題を流通するニセモノ時計たちの特徴へ移していきましょう。

世界には時計のコピー品が膨大な数流通しています。

明らかに全然違うじゃん!とパッと見てわかるものや、よく見ても鑑定に出しても本物かニセモノかが分からないぐらい精巧にコピーされたものもあります。
コピー品は知的財産権の侵害で違法という世界共通の認識とは裏腹に、コピー品の市場が存在しているという事実も存在します。

そんなコピー品を少しでも少なくしていくために、何点か簡易的な特徴がありますのでご紹介していきます。

●風防(ガラスケースの加工)
昨今の高級時計のサファイアガラス表面には無反射コーティングと呼ばれる日光の反射により文字盤が見にくくなることを防ぐコーティングが施されていたりします。このコーテイング自体がされていないものが粗悪品の中にはありますので、文字盤を見てみて異常に反射するな~見にくいなと感じたらまず疑ってみてください。

●針の塗装やコーティングの仕上げ
例えばカルティエ。ブルーの文字盤が綺麗な時計ですが、これはブルースチールと呼ばれ金属を焼き付けすることで綺麗な発色を持たせています。しかし、粗悪品にはそもそも焼き付けすらしていなく塗装で青く塗っているだけなどのコピー品もあります。有名な話ではロレックスの夜光塗料がそもそも夜光になってなく見た目の色だけ合わせているとかのものもあります。

●使っている部品がそもそも違う
フランクミュラーのコピー品にあった事例ですが、裏蓋のパーツを固定するためのビスが通常は「-」マイナスの形状をしていますが、「+」プラスの頭のネジを使用しているものもありました。

●革ベルト、ラバーストラップの刻印自体が違う
ベルトもそっくりそのままコピーされたものがあります。純製品のロゴ自体を忠実にコピーしてデータ化。→その後、量産してコピー品のパーツを作るなどの場合があります。レザー素材やラバーの固さや厚みなどの質感が違う場合や、そもそものロゴの刻印位置が純正と違うなどが可能性としてはありえます。

●ベゼルパーツなどの素材が違う
外目には判断しにくい部分になりますが、ベゼルパーツの素材が違うなどの時計もありました。
例えばシャネルの有名なモデル「J12」。このベゼルパーツがステンレスではなく真鍮にメッキ加工というものもありえました。一見した感じは同じ銀色ですが、時間の経過とともにメッキ加工されたものは変色やメッキの剥がれなどの劣化現象が現れてきます。

●ロゴの刻印が綺麗に押されていない
ロレックスなどが有名ですが、純正の文字盤への刻印はラバー素材のものに塗料を付けてスタンプするような形式で製造されます。その際には刻印の角度から塗料配合、版の制作におけるまで精密に計算されつくされた工程で行われます。本物には寸分の狂いもなく綺麗なROLEXのロゴが文字盤に現れますが、コピー品には塗料のゆがみ、フォントの形状が少し違うなど多々見分けるためのポイントが情報として出ています。

ここまでご紹介した内容についてはごく一部の真贋判別ポイントとなりますが、これから時計の購入をご検討されている方々は「ん?なんか違和感あるかな…」と感じたら一旦いろいろ調べてみることをオススメ致します。

3.本物そっくりのニセモノ

コピー品の中にもグレードがあって(コピーのランキング)というのも変な話ですが、そういうものがあるので是非この機会にみなさまへもご紹介しておきたいと思います。

パテックフィリップやオーデマピゲといった高級時計の上位に位置するブランドにもニセモノが存在します。
この辺りのブランドには素材がステンレスのみではなく金無垢(K18)のモデルも数多く存在します。
また、ジュエリーが時計のデザインとして組みこまれ、宝飾品としての様相を多く感じさせる時計も多くラインアップしています。

●使われてる素材が違う
大胆なコピー品の中には金素材はメッキ加工、ダイアモンドはジルコニアやガラス素材のものもあり得ますので、時計を持った時の重さは一番わかりやすい判別ポイントです。
例えばこんな例がありましたのでご紹介いたします。
みなさまもご存じジェイコブ。時計の裏蓋を開けて、内部のキャリバーも間違いなく本物ですが、ケースなどの外装部分がそっくりニセモノなものがあったようです。

●裏スケ時計から見えているキャリバーのデザインそのものが違う
オーデマピゲの偽造品で実際にあったようですが、ロイヤルオークオフショアの裏スケルトン部分から見える内部構造や回転盤。オーデマピゲの本物と同じように刻印も見えるし…と思ってよくよく見ていると本物には存在しない装飾パーツが付いていたみたいなことがあったようです。
見栄えだけ勝手に装飾してしまっているみたいなニセモノもあるようです。

●素材もあっている。刻印もある。けどニセモノ
これまたオーデマピゲのお話ですが、ステンレス素材なのにほかの格安メーカーと比べてなんであんなに高価なのか?といった理由にもつながる部分ですのでご紹介させていただきます。

よく匠の注文住宅や、高級オーダー家具などに使われる木材。これは同じ木なのに安価な建売住宅や格安家具となんで金額があんなに違うのか。といった話と似ています。その背景には作り手の技術もそうですが、木材(いい素材を厳選して)を「寝かす」という作業が含まれてくくるからです。「寝かす」(時間を置く)ことで木材の自然なしなりや、ねじれといった動きが安定します。水分量が抜け乾燥することで安定した強度も出てきます。これが金属にも実は当てはまる部分があって、金属を寝かすことで安定性と強度が出てきます。これは特にムーブメントの性能にも結び付いてくる部分になり、ゆえに技術と素材へのこだわりがオーデマピゲのあの金額になるわけです。

そういった見えない部分へのこだわりを度外視して作られるニセモノムーブメントも存在します。
ムーブメントの外から見える部分はかなり忠実に偽造されているのですが、外側のローターなどのパーツを外していくと中はペラペラな薄い金属で作られている。みたいな精巧なニセモノが世の中には流通しています。

まさに灯台下暗しといいますか、大胆不敵なまがい物もあったりするようです。

本物のキャリバーを使って、外装がニセモノ。
本物の外装を使って、中のキャリバーがニセモノ。

など、パッと見た目には刻印やその位置もしっかり酷似している時計があります。

そして、ここからが冒頭でお話ししたETA製ムーブメントの偽造品へとつながってきます。

一時期、高級時計の各メーカーがETA社よりムーブメントの供給を得ていた時期があります。つまり各時計ブランドにて共通に使われていたパーツが多いことを意味します。その時代背景を利用して外装はETA社のムーブメントにそっくりな、しかも中身は粗悪品のムーブメントを偽造し。外装はそっくり忠実に作れば中の機械は共通して使えるので安価にニセモノを流通させて儲けられるみたいなことを考える人達がいたんですね…大変残念なことに…

来年。2020年のETA社がムーブメントの供給を停止することで、もしかしたら偽造品の低減には少なからず寄与する部分もありません。しかし、実情としては純正のETA社のパーツの流通は今後少なくなっていきますので街の修理屋さんや中小規模の修理会社などは淘汰業界再編の流れが起こるかもしれません。

今後、このブログでは実際に贋品をご紹介できる時には画像付きでここのポイントがニセモノ判別ポイントですよ~というのを逐次特集していきますので、今後とも定期的にゆきざきブログを覗いてもらえれば幸いです。

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