【時計職人に聞く】Part.2 メンテナンスの神髄、「磨き」について。
【時計職人に聞くPart.2 】
メンテナンスの神髄、「磨き」について。
前回から始まりました時計のアレコレについて職人さんに聞いていこうというブログですが、
今回は第2回目。
時計の「磨き」についてフォーカスしていきたいと思います。
遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。
本年も、皆様方の変わらぬご愛顧をいただきますよう
気持ちを新たにして参りますので、宜しくお願い申し上げます。
さて、
仕事始めから約2週間、ようやく年末年始のスリープモードからの遅い立ち上がりを
された方々も多いのではないでしょうか。(笑)
そんなこんなで、今回のお題目は以下の通り↓↓
【時計職人に聞くPart.2 】メンテナンスの神髄、「磨き」について。
1.時計における磨きとは…
2.磨きの神髄、研磨作業
2-1.[まずは時計の状態を確認]
2-2.[時計のチェック]
2-3.[汚れ落とし]
2-4.[バフがけ]
2-5.[仕上げ、検品]
3.まとめ
1.時計における磨きとは…
長年、愛着のある時計と一緒に過ごされてきた人も、そうでない人も、
この機会にまじまじとご自身の時計をよく見て下さい。
時計のケースの横とか、ブレス(金属のベルト)部分には
細かい勲章(キズ)がたくさんあったりしませんか?
年月の変化と、思い出をそのまま残すのもいいですが、
実は綺麗にリフレッシュさせることも可能です。
やっぱり、袖口からキラッと煌めく時計。カッコイイですよね!
ブラッシングや水洗い、ベンジンで拭き上げることで
日々のメンテナンスをされている方も多いと思いますが、
今回の「磨き」ではプロが機械で磨いた場合にどんな仕上がりになるのか?
についてお伝えしていこうと思います。
2.磨きの神髄、研磨作業
2-1.[まずは時計の状態を確認]
長年連れ添った相棒には、場合によっては
過度の摩耗や金属疲労などが見て取れる場合がります。
まずは、時計がどんな状態なのか、
バックルのかみ合わせやコマの動きなども確認しながら時計の状態を確認していきます。
ブレス部分だけではなくケースの側面や裏側、ラグの表面や裏面、
ガラス表面のキズに至るまで、どんな状況なのかチェックしていきます。
お医者さんで言えば、まずは、初診の段階ですのでしっかりと問診をしていきますね。
という状況です。
2-2.[時計のチェック]
今回はブレスと時計本体ケースをしっかりと分解して磨く必要があると判断しました。
理由としては、
①キズの数が多く、広範囲に存在していること。
②ブレスの表面、側面、裏面や、ケースの側面や裏蓋も磨きをかける必要があること。
などから判断しました。
まずは、パーツを磨き易い単位に分解していきます。
こちらの時計はかなり磨き甲斐のある状態でしたので、
ブレス、ケースともに丁寧に磨き作業を行っていこうと思います。
次の工程は、実際に時計のケースを開けていきます。
磨き工程にはバフと呼ばれる回転式の機械を使いますので、
機械の振動が直にムーブメントに伝わってしまいます。
文字盤やムーブメントの保護も兼ねて心臓部はケースから取り外します。
外し終えたムーブメントには、
磨き作業中の時間に埃が入らないように透明なケースでカバーしておきます。
2-3.[汚れ落とし]
目立つ汚れがあれば最初にふき取ります。
↓
超音波洗浄機に入れて綺麗にしていきます。
目に見えないチリや埃、ブレスコマの連結部などの微細な汚れを落としていきます。
↓
水洗いして、水気を拭き取れば準備完了です。
ロレックスにはヘアラインという表面の仕上げが施されています。
研磨後の仕上がりを綺麗にしていくためにも、
まずは、ベースを綺麗な状態に整えることが仕上がりにつながっていきます。
2-4.[バフがけ]
最初は磨きの面積が大きい部分から開始してきます。
バフィングという高速に回転する機械にパーツを押し当てながら研磨していきます。
そのまま磨いてもいいのですが、研磨剤を少量塗布することでより綺麗な仕上がりになります。
強く押し当てすぎてもダメですし、弱く当てすぎると磨きがかからないという現象に…
力のさじ加減が仕上がりに直結する職人技です。
最初にブレス部分から着手しました。
次に、時計本体ケース部分です。
うっかり手元がブレてガラスに傷が入らないように、事前にマスキングしておきます。
本体ケース側面のバフがけもぬかりなく行います。
以上で、大きな部分の磨きが完了しました。
2-5.[仕上げ、検品]
最後は小さい面積の磨き工程です。
仕上がりの風合いや、他のパーツへの流れなども意識しながら
目線は小さな部分と大きな部分を行き来させながら磨きを施していきます。
ルーター(手で持って細かい磨きをできる機械)の先端パーツも使い分けながら
より細かいニュアンスを出していきます。
時計本体ケースも同様に仕上げ作業をしていきます。
磨き作業が完了しましたら、
もう一度、超音波洗浄機へ。
小さな汚れまできれいに落としていきます。
いろいろな角度から最初のキズがリフィニッシュできているかどうか確認をします。
光の反射の具合や素材の曲線、触った時の感触なども織り交ぜながら、
仕上がりチェックを行っていきます。
途中で気になる部分があれば、微調整を繰り返しながら最善の仕上がりを目指します。
最後に時計の本体ケースにムーブメントを組み込みます。
「そして、いよいよ最終検品。」
竜頭の操作状況、時計の動きなどい問題がないかを確認して「磨き」作業の完了となります。
3.まとめ
今回はロレックス エクスプローラーI 14270の磨きについて特集しました。
それでは、ビフォー、アフターの変化を見てきましょう。
↓ビフォー画像
↓アフター画像
↓ビフォー画像
↓アフター画像
今回、磨きをかけたエクスプローラーI 14270は元々深いキズがありました。
磨きだけの視点から言えば消すことももちろんできるのですが、
「磨き=素材を削ること」とほぼ同意ですので、仕上がりのバランスに響いてきます。
ビフォー、アフターの写真をよく見ていただくと分かるのですが、
キズが完全に消えてリフィニッシュされているわけではありません。
それには理由がります。
磨きすぎると表面を触った感じがフラットでなくなったり、
見た目の高級感やデザインバランスが損なわれたりすることもあります。
場合によっては強度に影響してきたりしますので、
もちろんできる範囲、できない範囲があります。
その境界線を見極めながら、
「どういう手法で、どこまでアプローチするのがベストなのか。」
について、しっかり考えて磨いてくれるところにお願いする。
のが大事なポイントです。
今年は心機一転、お持ちの時計を綺麗にリフレッシュさせてみてはいかがでしょうか!
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