【時計職人に聞く】Part.14 「時計職人と言われる職人たち。(続編)
以前の記事【時計職人に聞く】Part.4 メンテナンスの神髄、「時計職人」と言われる職人たち。でご紹介したのですが、今回はこのPart.4の続編となります。
「グノモン」という昭和30年代初頭の時計雑誌から一部ご紹介させて頂きながら、日本の時計業界の技術がどのように高まっていったのかなど、ちょっとマニアックな部分がありますが、時計の今までの歴史などに興味がおありの方はぜひ見ていただければと思います。
当時はこんな環境だったのか~と感じることができると思います。
1.前回のおさらい。一級時計修理技能士って何?
2.グノモン(GNOMON)の中身はどんな内容。
3.実際にどんなことが書いてある?
4.続編へ続く…
1.前回のおさらい。一級時計修理技能士って何?
日本全国、町の時計屋さんからメーカー勤めの方々も含めてると、そもそも時計を作ったり修理したりすることに従事する人々は多くの方々がいます。
そんな中で、時計に関わる仕事には時計を作る人と、すでに流通している時計のメンテナンスをする人に大きく見ていくと分かれるかと思います。
やはり比較すれば後者に関わる方々が多いのは想像できると思いますが、その中でも技術や経験の差がありますので、そこを国家資格というものを基準としてどのぐらいの力量なのか評価をしていきましょう。ということが日本では行われています。
例えば、医者や弁護士のようにこの資格を保持しているのであれば、その範疇の仕事は専門家だから任せようとなりますよね。同じように時計の調子があまりよくない時などに大切な時計を安心して身を預けることができる一つの判断基準にななり得ます。
この、【時計修理技能士】の資格には
一番上位に特級、そして1級~3級までの各段階がありますが、
私たちゆきざきの技術部門には 【1級時計修理技能士】取得した技術士が在籍しています。
ちなみにこの【時計技能士】の1級資格はなかなかな難易度です。
何といっても 受験資格として実務経験が10年以上、あるいは、2級合格後実務経験が2年以上必要という制限がありますのでちゃんと知識も技量も伴わないと合格できません。
↓↓↓ちなみに受験資格一覧はこんな内容です。
↓試験資格画像の出展はコチラ
中央職業能力開発協会 JAVADA
2.グノモン(GNOMON)の中身はどんな内容。
グノモン(GNOMON)は日本の時計専門誌ですが、今と違いインターネットの無い時代ですから、海外の先端技術を取り入れる上で技術者の間ではとても参考となった情報だったのではないでしょうか?
特にこのグノモンにおいての内容は、ことに 【米国時計学会公認高級時計師】
通称 C.M.W.(Certified Master Watchmakerの略称です。) と密接な関係性があった事が分かります。
C.M.W.という資格は時計を一から製造できるだけの見識と技術を持った人にだけ与えられた資格であったので大変の難関資格です。
その資格を持った人が誌面での連載を持っていたようですから、現代で言えば専門的な内容を勉学者へ指南するという趣旨も大いに含んだ、ある種のブログやMOOC(ムーク)的な源流だったのかなぁと考えてみると、またこれも面白い部分だなと感じます。
3.実際にどんなことが書いてある?
それでは実際に中身をご紹介してきましょう。
時計技術講座(9)と表題があります。講座形式で時計の技術概要がびっしりと記載されています。このページの内容は「ひげゼンマイの修復法」のようです。
以下抜粋です。
「彼の持つこの重要な知識並びに技術のゆえに彼がひげゼンマイを器用に取り扱っていくのを見てお客は賞賛のまなざしを投げるものである。」
「このようなことを経験しながらやっていくと、終局にはゼンマイは思うままに扱えるようになる。」
このような言葉が綴ってあります。知識や技術に裏付けされた時計の取り扱いに当時の人たちも感動していたのではないでしょうか?
また、時計修理技術者をめざす方々からも時計という世界のロマンや羨望のまなざしで見られていたことが伝わってきます。時計というのは昔から変わらず人々を惹き付ける魅力があるのだなーなどと感じます。
このページにはこんなことが書かれています。
以下抜粋。
「ひげゼンマイの動きは滑らかであり美しく生命を保持するように思える。
またこの伸縮には息吹に似たものがある。」
時計を芸術の範疇で捉えているのがとても面白いなーと思います。
現在でも時計にはアート的な要素や芸術性を含んだデザインが多く取り込まれていますが、それは前の時代より脈々と受け継がれた技術の上に成り立つのものであるという印象を感じさせてくれます。
この内容は創刊号1956年(昭和31年)からの抜粋ですので、約60年以上も前から、このような熱い心意気を持った人たちが多くいたのですね。
ひげゼンマイの取り扱い方、作業練習の方法などが図解してあります。
今回ご紹介させていた頂きました資料は、弊社の時計技術者が個人的に見識を広めるために持っていたものをお借りして掲載させて頂きました。
私たちゆきざきには時計への愛が深い技術者が多数在籍しております。もちろん新卒採用で入社した若い技術者の卵も在籍しております。
最近時計への興味が芽生えた方も、このブログを読んで頂くようなとても時計がお好きな方々にもとっても、安心して時計のご相談がお受けできるゆきざきでありたいと考えておりますので何かご相談事がございましたら私たちへお声がけ頂ければ幸いです。
今後とも、宜しくお願い致します。
前回の記事はコチラ>>>【時計職人に聞く】Part.13 ニセモノの時計の見分け方。Chanel J12 編
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