ブレゲ「マリーアントワネット」は伝説の時計|ブレゲおすすめモデルも紹介
高級腕時計の中には、世界的な有名人との逸話を持つものが数多く存在します。創業から200年以上の歴史を誇るブレゲも、そんなブランドの一つです。かつてのフランスで王妃を務めていたマリーアントワネットのために、特別な時計を製作したという伝説が残っています。
本記事では、ブレゲとマリーアントワネットとの関係や、伝説の時計が完成に至るまでのストーリーについて紹介していきます。
ブレゲとマリーアントワネットの関係とは
ブレゲがパリに工房を構えた1775年、当時王国であったフランスは栄華を極めていました。国王ルイ16世の妻マリーアントワネットも、その地位にふさわしい最高級品と呼ばれる品々を買い求める日々を送ります。時計に関しても、極上の美しさを持つ一級品のみを所有するというこだわりを持っていました。
そんなマリーアントワネットが出会ったのが、ブレゲの時計でした。精緻なメカニズムと優れた芸術性を併せ持つ時計に、彼女は瞬く間に魅了されます。以降はブレゲの熱烈な愛好者となり、いくつもの時計を購入するとともに、国内外の貴族にもブレゲの時計を紹介していきます。
ブランドの創業者であるアブラアン・ルイ・ブレゲにとって、いつしかマリーアントワネットはこれ以上にない重要な顧客となっていたのです。
ブレゲ NO.160(マリーアントワネット)のストーリー
マリーアントワネットがブレゲにとって重要な顧客であった逸話の一つに「ブレゲ NO.160」というモデルを製作した話があります。通称「マリーアントワネット」と呼ばれるその時計は、まさしく彼女の名前にあやかったものです。
現在では伝説となっているモデルですが、一体どのような経緯によって製作されたのでしょうか。そのストーリーを追っていきましょう。
一人の男性からのオーダー
1783年のある日、パリ市内のブレゲの工房に一人の人物が現れます。その男性はマリーアントワネットの礼賛者を名乗り、彼女への贈り物という名目で時計を注文しました。その内容は「時間や費用に一切の制限を設けず、あらゆる技術を詰め込んだ最高の時計を作ってほしい」というものです。
具体的には、可能な限り部品にゴールドを使用すること、この世にある複雑機構をなるべく多く搭載することを注文しました。その頃、マリーアントワネットはすでにブレゲの愛好者であったため、依頼に訪れた男性はより特別な一品を求めたのでしょう。
この男性の正体については諸説あり、実際はマリーアントワネットの使者であったとも、彼女に思いを寄せる高位の宮廷人だったともいわれています。
NO.160は注文から40年以上経過していて完成
依頼を受けたブレゲは、さっそく製作に取り掛かります。当時、宮廷時計技師として名をはせていた彼にとって、自身が手掛けた時計をいくつも愛用する王妃に至高の一品を届けることは、重要な使命に感じられたでしょう。
しかし、製作開始からしばらく経った1789年にフランス革命が勃発。暴動に巻き込まれることを回避するため、ブレゲはスイスへと移住します。その間は作業を中断せざるを得ず、時計を手にすることがないままマリーアントワネットは1793年に処刑されてしまいます。
彼女の死の知らせを受けてもなお、ブレゲはその時計の製作を諦めませんでした。しかし、ブレゲもまた完成を目前にして1823年にこの世を去ります。以降は弟子たちが跡を継ぎ、1827年に時計「NO.160」を完成させます。それは、ブレゲの死から4年後、注文が舞い込んでからは実に44年後のことでした。
1983年に盗難にあい行方不明に
動乱の時代を経て完成したものの、受け取る相手がいなくなってしまった「NO.160」は、長らくブレゲ家の私財として保管されていました。
それから幾人かの所有者を経由したのち、時計愛好家であったデヴィッド・ライオネル・サロモンズ卿の元に渡ります。彼はブレゲコレクターとしても知られており、ブレゲが遺した貴重な作品として「NO.160」をコレクションの一つに加え、生涯大切に扱いました。
サロモンズ卿の死後、1960年に「NO.160」は遺族によってエルサレムにあるL.A.メイヤー記念イスラム美術館へ寄贈されます。しかし、1983年に何者かが美術館から持ち出したことで所在がわからなくなり、2007年12月に発見されるまでのおよそ20年もの間、幻の時計となっていたのです。
ブレゲ NO.160の復刻モデルが登場
創業者が生きていた時代の技術の粋を詰め込み、最高傑作といわれた「NO.160」が失われたことは、ブランド関係者のみならずファンの心をも痛めました。そのため、ブレゲの7代目であるエマニュエル・ブルゲは、伝説の時計を現代に蘇らせるべく、水面下でプロジェクトを立ち上げます。
過去の文献や当時のモデルについて徹底的に調べ上げ、アーカイブに残されている記録と図面を参考にして、復刻版となるモデルを製作していきます。
4年の歳月をかけて作られたその時計は、原型となったモデルにちなんで「NO.1160」と名付けられました。完成したのは2008年4月であり、くしくも行方不明となっていたオリジナルがその直前に発見されるという、運命のいたずらとも思える出来事に翻弄される中で生まれたのです。
なお、無事に発見された「NO.160」は、盗難当時の所有者であったエルサレムの美術館へと戻されています。
バーゼルワールド2008で発表
時計や宝飾品の新作などをお披露目する場として、スイスの都市バーゼルで毎年開催されていた世界最大の見本市「バーゼルワールド」が有名です。ブレゲはこの年、現代の職人の手により蘇った「NO.1160」、通称「マリーアントワネット」を携えました。
このニュースは瞬く間に世界の時計愛好家たちに伝わり、大きな衝撃を与えました。レプリカとはいえ伝説のモデルを忠実に再現しているため、中には譲り受けることを申し出た人もいたほどです。しかし、ブレゲはそのような要望には一切応じませんでした。
さらに「NO.1160」自体も人前にその姿を見せる機会が限られていることから、神秘性に拍車がかかり、今もなお名作として語り継がれるモデルとなっています。
ブレゲのおすすめモデル4選
腕時計ブランドの中でも指折りの歴史を持つブレゲには「マリーアントワネット」の他にも魅力的な時計が数多く存在します。現在、入手可能なモデルからおすすめのアイテムを紹介しますので、時計選びの参考にしてみてください。
クイーンオブネイプルズ ベゼルダイヤ 8918BA/58/864/D00D
クイーンオブネイプルズ ベゼルダイヤ 8918BA/58/864/D00Dは、フランス皇帝ナポレオンの妹であり、ナポリ王妃として華やかな生活を送ったカロリーヌ・ミュラのために作られた特別な腕時計を再現したシリーズです。このモデルは、117粒ものダイヤモンドを贅沢に配したベゼルがひときわ目を引き、その輝きは時代を超えて現在でも圧倒的な存在感を放っています。
リューズや文字盤下部の6時位置にも大粒のダイヤモンドがセットされ、華やかさにさらに磨きをかけています。文字盤には、天然のホワイトシェルが用いられており、一つひとつ異なる模様がその個性を際立たせます。この自然が生み出す唯一無二のデザインは、所有者だけの特別感を与えることでしょう。
また、文字盤のインデックスは、上部に向かうほどフォントが大きくなるという斬新なデザインを採用。ダイナミックさを感じさせつつも、卵型のケースが全体に柔らかさと上品さを加えています。この絶妙なバランスが、かつての王侯貴族のような気品を現代に蘇らせ、時計愛好家の心を惹きつけてやみません。
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マリーン クロノグラフ 5527BB/Y2/5WV
ブルーの文字盤とストラップが際立つ「マリーン クロノグラフ 5527BB/Y2/5WV」は、フランス王国海軍との深い結びつきを持つ「マリーン」シリーズの中でも特に注目されるモデルです。
42mmのケース径はスポーツモデルとしての力強さを持ちながらも、腕時計としての上品さを失うことなく、ブレゲならではの洗練されたデザインを感じさせます。特に、長針と短針の先端に施された繊細な丸い装飾は、ブレゲが生み出した「ブレゲ針」として知られる特徴的なデザインで、ブランドの独自性を象徴しています。また、秒針に配された国際海洋信号旗を模した装飾は、海洋への深いオマージュが込められており、デザインの随所にストーリー性が感じられます。
一つひとつのディテールにこだわりを持ちながらも、時計全体としてのバランスを損なわない完成度の高さは、ブレゲが長年培ってきた伝統と技術の集大成ともいえるでしょう。
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マリーン 5517BR/G3/9ZU
温かみのあるローズゴールドのケースと、ブラックレザーのストラップが絶妙な調和を見せる「マリーン 5517BR/G3/9ZU」。秒針にあしらわれた海のモチーフや、グレーの文字盤に繊細に刻まれた波模様が、海を想起させる特別な存在感を与えています。
特筆すべきは、文字盤に採用されたギョーシェ彫りと呼ばれる伝統的な装飾技法です。これは、光の反射を抑えつつ視認性を向上させるという、機能美と芸術性を兼ね備えた技術。ブレゲの長い歴史と卓越した職人技術の粋が、ディテールにまで表れています。
そのデザインは日常の装いを上品に引き立てるだけでなく、フォーマルなシーンにもふさわしい佇まいを見せてくれるでしょう。「マリーン 5517BR/G3/9ZU」は、伝統と革新が見事に融合した、ブレゲの真髄を感じられる一本です。
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マリーン クロノグラフ 5527 5527BR/G3/9WV
天才時計技師として知られるアブラアン・ルイ・ブレゲは、ヨーロッパの王侯貴族のみならず、フランス王国海軍のために高精度な航海時計を提供するなど、その卓越した技術で名をはせました。その伝統と革新が融合した「マリーン」シリーズは、海をテーマにしたデザインと先進的な技術を備えた逸品として高い評価を受けています。
中でも「マリーン クロノグラフ 5527 5527BR/G3/9WV」は、伝統を継承しつつも現代的な実用性を兼ね備えたモデルです。ローズゴールドのケースが放つ上品な輝きと、文字盤に施された繊細な波模様は、海の力強さと優雅さを象徴しています。3つのカウンターが配置されたクロノグラフは視認性に優れ、日常生活でも活躍する精度と利便性を感じるでしょう。
さらに、このモデルは自動巻きムーブメントを搭載し、高い耐久性と信頼性を誇ります。100メートルの防水性能も備えており、あらゆるシーンで安心して使用できる点も魅力的です。また、針とインデックスには蓄光塗料が施され、暗所でも優れた視認性を確保しています。これらの特長が一体となり、「5527BR/G3/9WV」はエレガンスとスポーティーさを見事に調和させた、ブレゲを代表するクロノグラフモデルとなっています。
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ブレゲNO.160「マリーアントワネット」は究極の時計
ブランドの長い歴史を積み重ねる中で、数多くの名作や現代でも欠かせない機構を生み出してきたブレゲ。その魅力の虜となり、愛してやまない有名人も少なくありません。ブレゲにとって最大のパトロンであり、革命の波に消えたマリーアントワネットもまた、その一人です。
彼女にまつわる「NO.160」は、当時知られていたあらゆる時計製造技術を組み込み、途方もない歳月をかけて完成した時計として、技術が進んだ現代でも人々を魅了し続けています。もし直接目にする機会があれば、その数奇な運命に思いをはせてみると、より深みが増すでしょう。
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