

ブレゲが魅せる複雑機構|トゥールビヨンの仕組みと進化とは|おすすめモデルも紹介

天才時計技師アブラアン-ルイ・ブレゲ氏が発明した中でも、特に複雑な仕組みといわれるトゥールビヨン。
トゥールビヨンは、時計を見なくても音で時刻を知らせるミニッツリピーターや、自動でカレンダー調整をしてくれるパーペチュアルカレンダーとともに、世界三大機構のひとつとして知られています。
今回は、トゥールビヨンの魅力や基本構造を含めた仕組みをはじめ、トゥールビヨンの種類について解説します。また、トゥールビヨンを搭載したブレゲのおすすめモデルについても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ブレゲの「トゥールビヨン」とは

トゥールビヨンとは、姿勢差(時計の向き)による精度の誤差を解消する複雑機構です。機構の動きが、まるで渦を巻いているかのように見えることから、フランス語で「渦」を意味するトゥールビヨンと名付けられました。
トゥールビヨンが発明された1801年当時は懐中時計が主流でした。その当時、懐中時計はポケットに入れたままの状態であるため、精度を司るパーツが微妙にたわんでしまい、正確に時刻を刻むことができませんでした。
この問題を解消すべく、アブラアン・ルイ・ブレゲ氏は安定して高い精度を保つ複雑機構、トゥールビヨンを発明します。
しかし、その複雑さゆえに当時は普及するまでに至らず、脚光を浴びるようになったのは1983年にブレゲ社がトゥールビヨンモデルを復活させてからです。このトゥールビヨン復活を機に機械式時計が人気を博すようになりました。
ブレゲ「トゥールビヨン」の魅力
トゥールビヨンは、正確な時刻を刻むことを目的として発明された機構ですが、高い精度の他にも数多くの魅力があります。ここでは、ブレゲのトゥールビヨンが持つ3つの魅力について解説します。
仕上げの美しさ
トゥールビヨンに用いられる部品は、非常に小さいながらも複雑な形状をしており、高い仕上げ技術を要します。そのため、ブレゲのトゥールビヨンは、卓越した技術を持つ熟練の職人の手によって仕上げられています。
またブレゲは、トゥールビヨン機構を美しく見せるための加工技術が他社よりも優れており、ムーブメントの細部にまでこだわった緻密な仕上げは、まさに動く芸術品といえる完成度の高さです。
選び抜かれたパーツのひとつひとつが丁寧な仕上げによって組み込まれ、ダイナミックに躍動する様子は、まるで命を吹き込まれた鼓動のように感じられる美しさを体現しています。
ラインナップが豊富
ブレゲはトゥールビヨンを搭載しながら、独自の特徴を持つコレクションを多数取り揃えています。例えば、伝統的なデザインと技術を融合したクラシックコレクションや、防水性能と耐久性が高くスポーティーなデザインのマリーンコレクションなどは、ブレゲの王道コレクションといえるでしょう。
他にも、文字盤側からもムーブメントが望めるトラディションコレクションや、洗練された曲線美のトノー型ケースが特徴的なヘリテージコレクションと独創的なモデルを多数展開しています。
また、楕円形のケース、丸みを帯びた中央のラグを特徴とするクイーン・オブ・ネイプルズコレクションのようなドレスウォッチも展開しているため、さまざまなモデルの中から選べる楽しみもあります。
美しさと実用性を兼ね備える
ブレゲのトゥールビヨンは非常に高度な技術で作られており、その複雑な機構自体が芸術作品として楽しめるよう趣向を凝らしています。くり抜かれた文字盤やシースルーバックになっている裏蓋からは、トゥールビヨン機構の美しい配置やムーブメントの緻密な動きを存分に鑑賞できるでしょう。
また、ムーブメントの心臓部を構成するゼンマイには磁気帯びすることのないシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、耐磁性を飛躍的に向上させています。複雑機構を備えることによって高い精度を誇るだけでなく、美しい機構を鑑賞できる芸術性も両立している点がブレゲの魅力です。
トゥールビヨンの仕組みと基本構造

トゥールビヨンは、ブレゲブランドが誇る革新性と職人技術の結晶ともいえる複雑機構です。ここでは、トゥールビヨンの構造や一般的なムーブメントとの違いについて解説します。
トゥールビヨンの機構
トゥールビヨンは、キャリッジと呼ばれるかご状の回転体に脱進機とテンプを収め、一緒に回転させることで、垂直方向の重力を分散させる構造となっています。脱進機とテンプを構成するパーツには、アンクル、ガンギ車、ヒゲゼンマイがあり、ガンギ車とアンクルとの重量バランスをとるためのウエイトが取り付けられています。
これらのパーツは、完璧なバランスを保ちつつ組み立てなければ正常に動作しません。要求される調整技術レベルが非常に高度であるがゆえに、トゥールビヨンの実用化までに多くの年月を要しました。
トゥールビヨンと一般的なムーブメントの違い
一般的な機械式のムーブメントも、トゥールビヨンと同様にヒゲゼンマイやアンクル、ガンギ車、テンプなどの部品から構成されています。ただし、構成されている部品は同じでも、根本的な仕組みが異なります。
一般的な機械式のムーブメントではパーツが平面で固定されていますが、トゥールビヨンの場合は固定された四番車の上部にパーツをひとまとめにしたキャリッジを乗せている点が特徴です。キャリッジを1分間でゆっくり1回転させることによって、一般的なムーブメントで発生する重力の影響を受けずに済むことから、高い精度を保つことができます。
トゥールビヨンは、時計の動力源であるゼンマイのたわみを無くすための仕組みが詰め込まれた傑作品だといえるでしょう。
トゥールビヨンの種類

トゥールビヨンは構造やデザインの違いによって種類が分かれており、それぞれ独自の特徴を持っています。ここでは、3種類のトゥールビヨンの特徴について解説します。
ノーマルトゥールビヨン
ノーマルトゥールビヨンは、アブラアン-ルイ・ブレゲ氏が懐中時計向けに開発した機構を腕時計用に小型化したものです。トゥールビヨンの基本ともいえる機構であり、ベーシックな形であると知られています。
ノーマルトゥールビヨンは、脱進機を含む周辺の部品をキャリッジに収めた伝統的な作りで、ムーブメントの両サイドからブリッジで固定されています。また、文字盤の一部に「窓」を設けてその動きを見せるデザインが多く採用されており、伝統を受け継ぐクラシックコレクションはノーマルトゥールビヨンの代表作といえるでしょう。3種類の中でも比較的手が届きやすい価格帯のモデルが多いことも特徴のひとつです。
フライングトゥールビヨン
フライングトゥールビヨンは、キャリッジを裏蓋側のブリッジでのみ支えているタイプのトゥールビヨンです。1920年当時、グラスヒュッテ時計学校の校長であったアルフレッド・ヘルヴィッヒが、ブリッジの取り付け位置をキャリッジ下部に移したことがきっかけで生まれました。
表側である文字盤側には支えるブリッジがないため、キャリッジが宙に浮いているように見えることから、フライングトゥールビヨンと呼ばれています。
キャリッジの動きを遮るものがないため、トゥールビヨンのダイナミックな動きを楽しむことができる反面、支えが片側だけであるため、精度と耐久性を確保するのが非常に難しく、製造に高度な技術が必要です。
3Dトゥールビヨン(ジャイロトゥールビヨン)
3Dトゥールビヨンは時計製造技術を極めた高級腕時計ブランド、ジャガー・ルクルトが開発した球体構造のトゥールビヨンです。3Dの球体に収められたキャリッジを複数の回転軸で回転させて重力の影響を分散させています。多軸で回転する特徴からジャイロトゥールビヨンとも呼ばれています。
キャリッジが立体的に動く様子を存分に堪能できるように工夫されているモデルが多いことから、独創的かつメカニカルな美しさを味わうことができるでしょう。3Dトゥールビヨンを搭載したモデルは、卓越した時計製造技術の結晶として最高峰の精度を保証するとともに、芸術的価値も高いことが特徴です。
コレクターズアイテムとして評価が高い分、高級腕時計ブランドのモデルの中でも、特に高価格帯のものが多いです。
ブレゲ「トゥールビヨン」のおすすめモデル3選

ここでは、ブレゲのトゥールビヨンモデルの中でも、特におすすめしたいモデルを3つ紹介します。
クラシック グランド コンプリケーション トゥールビヨン メシドール 5335BR/42/9W6
「5335BR/42/9W6」は、アブラアン・ルイ・ブレゲがトゥールビヨンの特許を取得した共和暦第9年メシドール7日(1801年6月26日)に敬意を表し、誕生した特別なタイムピースです。
両面にサファイアクリスタルガラスを採用したスケルトン仕様により、6時位置に浮かぶように搭載されたフライングトゥールビヨンの精緻な動作を、あらゆる角度から堪能できる設計となっています。ケースには18Kローズゴールドが用いられ、スケルトン構造に気品を添えながら、優れた耐久性も確保されています。
さらに、細部に至るまで施されたポリッシュ仕上げや面取りなど、手作業による丹念な加工の数々が、ブレゲならではのクラフツマンシップを物語っています。技術と美学が融合した1本として、時計愛好家の心を深くとらえるモデルです。
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クラシック グランド コンプリケーション トゥールビヨン メシドール 5335PT/42/9W6
アブラアン・ルイ・ブレゲ氏がトゥールビヨンの特許を取得した日(1801年6月26日)に由来して誕生したのが、「5335PT/42/9W6」です。スケルトン仕様の本モデルでは、サファイアクリスタルディスクの上にトゥールビヨン機構が浮かび上がるように設計されており、メカニズムの奥行きと透明感を同時に楽しめるデザインが魅力です。
ケースには、気品と重厚感を兼ね備えたプラチナ素材を採用。手作業によって施された繊細な装飾が、素材の持つ冷ややかな輝きと調和し、ひときわ優雅な印象を演出しています。
また、12時位置にはクラシカルなブルースティールのブレゲ針が、6時位置にはフライングトゥールビヨンがそれぞれ配されており、伝統的なミステリークロックの要素を巧みに取り入れることで、ブレゲならではの神秘性と品格を宿した1本に仕上がっています。
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クラシック グランドコンプリケーション 5357BA/1B/9V6
古典的な美しさと高度な技術が融合したブレゲの名品「5357BA/1B/9V6」は、クラシック グランドコンプリケーションの名にふさわしい存在感を放ちます。ホワイトローマンインデックスを配した文字盤には、熟練の職人による繊細なギヨシェ彫りが施されており、時計全体に気品と立体感を添えています。
文字盤表面には、ピラミッド形の鋲が規則正しく並ぶ「クル・ド・パリ(Clous de Paris)」と呼ばれる伝統技法が用いられています。この装飾は、視覚的な美しさだけでなく、光の反射を抑えて視認性を高める実用性も兼ね備えており、まさに機能美を体現した意匠です。
ケースには18Kイエローゴールドを採用し、風防にはサファイアクリスタルガラスを搭載。華やかさと重厚感を併せ持ちつつ、傷に強い素材構成によって日常使用にも耐え得る仕様となっています。時を超えて愛される一流の機構美と、普遍的な上品さを求める方にふさわしい1本です。
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ブレゲのトゥールビヨンは芸術的な美しさが魅力
トゥールビヨンは、ブレゲブランドが誇る革新性と職人の卓越した技術を詰め込んだ複雑機構です。最高峰の精度や耐磁性に優れているだけではなく、細部にわたって作り込まれた芸術的な美しさは一見の価値があります。
特に、トゥールビヨン機構をより美しく魅せることを追求したブレゲの加工技術は他社を圧倒しており、伝統を受け継ぎながら磨かれていったデザインセンスに関しては群を抜いています。
細部にまでこだわったクラシカルなトゥールビヨンの鼓動を、ぜひ一度手にとって体感してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者

佐藤高雅(さとうたかまさ)
株式会社ジェムキャッスルゆきざき ECソリューション室副室長
1996年生まれ。高校在学中に煌びやかな高級腕時計やジュエリーに興味を持つ。
大学在学中に某日本メーカ時計正規店でアルバイトを経験し卒業後、店舗販売員として2019年ジェムキャッスルゆきざきに入社。
3年間販売員を経験した後、時計の知識や文章力を買われECソリューション室へ異動。
以後ゆきざきサイトの文章やブログ記事、デザイン関連を統轄しており、メディア広報室立ち上げ時にはYouTubeレギュラー出演やニュース番組、中国系SNSにも出演する。
初めて購入した腕時計は、23歳でブレゲのマリーン2。
婚約時計はペアでジャガールクルトのレベルソ。
ランゲ&ゾーネ ランゲ1を手に入れるものの、自分には早すぎたと手放す。
40歳になったら記念で購入予定(理想)
好きなブランドは、ジャガールクルト・ランゲ&ゾーネ・FPジュルヌ。時計業界歴7年。
■経歴
2019年 株式会社ジェムキャッスルゆきざき/新卒
2021年 メディア広報室/設立
2022年 ECソリューション室/副室長
■得意領域
WEBライター
高級腕時計全般
■保有資格
Google アナリティクス認定資格(GAIQ)
ジュエリーコーディネーター





